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POSTED/2022.08.17

表面処理とは

表面処理の概要

 上の画像はドアノブを表面処理(ショットブラスト加工)した画像になります。素材成型後の仕上げとして、「梨地加工」と呼ばれる粗めの研磨を行い、梨の表面のようなざらつきをあえてもたせる処理になります。この処理により、汚れ(指紋、脂)防止、滑り止め、触り心地、見た目などが同時に改善し、製品がワンランク上の品質に仕上がります。
 
このように、表面処理とは、製品表面の加工・機能付与などを目的とした処理の総称であり、多岐に渡る処理が存在しますが、大きくは以下の3種類の働きに分類することができます。

 

・削る(研削、研磨、塗装前処理、エッチング、等… )

 →表面を削る加工処理。

・改質する(硬化処理、熱処理、化成処理、等…)

 →表面に直接機能性を与える処理。

・成膜する(めっき、塗装、アルマイト、溶射、等… )

 →表面に母材とは別の物質を付着させ、膜を形成する処理。

 

製品の表面だけの処理が、なぜここまで多岐に渡る処理方法があるのでしょうか。その理由は、製品表面が、外気/液体/個体に触れ、他部品/材料に触れ、人(購買者)の手や目に触れる、という「外界に触れる」ことの重要性と難しさがあるからです。多岐に渡る外乱(力、錆、汚れ、電気…)から内部を保護し、他部品と組み合わせる精密な形状や必要な機能性を付与し、人が魅力を感じられるデザイン/質感を表現することは、表面処理技術が担う重要な役割となっています。私たちが毎日触れている様々な製品、スマホ、パソコン、腕時計、椅子、テーブル、車、電車、飛行機、建物の屋根、壁、床に至るまで、表面処理技術はモノとヒトが触れ合う最前線で活躍している最も身近な技術でもあります。

 

削る

 最も古くから行われていると考えられる表面処理が、研削や研磨といった加工処理になります。手作業ではやすり掛けが一般的ですが、工業的には粒状の研磨材を広く投射して研磨するショットブラスト加工や、化学薬品の腐食作用を利用して表面を劣化、溶解させるエッチングなどが代表的な加工方法です。

 

ショットブラスト加工

  粒状の研磨材を羽根車やエアーによって投射し、材料表面に衝突させることで研磨する方法です。砂を吹き付けるサンドブラストという方法が古くから行われており、それが発展して様々なブラスト機械、研磨材が開発されています。粗く削る「梨地加工」から、不要部分のみを取り除く「バリ取り」、表面を磨き上げる「鏡面加工」まで、幅広い加工が可能です。

 

バレル加工

 樽状のかご(バレル)に、材料と研磨材(メディア)と水を入れ、洗濯機のように回転攪拌させることで、材料表面を研磨する方法です。

 

エッチング

 材料を腐食液に浸し、不要部分を溶解させて取り除く加工です。マスキングと呼ばれる防食処理によって、除去しない部分を保護しながら、ピンポイントに加工することもできます。

 

改質する

製品表面の物理的特性(硬度など)を改善するのも表面処理の大きな役割になります。

 

ショットピーニング

 ショットブラスト加工の一種で、製品表面の硬度、耐久性向上を目的とした加工です。球状の研磨材を使用し、製品表面を打ち付けて鍛えることで、加工硬化と、残留応力付与による耐久性向上を狙った加工になります。

 

熱処理

 鉄系材料で広く行われている表面硬化を目的とした処理として、二酸化炭素などの雰囲気中で表面に熱を加える「焼き入れ」があります。雰囲気の炭素成分を表面に取り込み(浸炭)熱が加えられることで組織が変化、表面が硬化しますが、内部は柔軟さを保ったままなので、摩耗しにくく、かつしなやかで折れにくい鋼となります。アンモニアなどの窒素系の雰囲気にて熱処理する場合は、窒化処理と呼ばれます。

 

 

成膜する

 表面処理の中で、製品表面に薄い膜を生成する処理は多岐に渡ります。処理の目的としても様々で

・保護(耐食性、耐摩耗性)

・デザイン、装飾

・寸法変更(厚み増加)

・機能性付与(潤滑特性、電気特性)

などがあげられます。代表的な成膜は以下の通りです。

 

塗装

 最も身近で簡単な成膜方法として、製品表面に直接塗料を塗る、塗装があります。製品を防錆、保護しながら、色彩のある塗料によってデザイン、装飾を同時に行うことができます。塗布方法は、ハケ、ローラーによるもの、スプレーで噴射するもの、塗料を含む溶液に浸して電気を流し塗料を析出させる電着塗装などがあります。

 

めっき

 製品表面に金属の膜を析出生成させる成膜処理であり、塗装よりも強固で剥がれにくい金属の膜を生成できます。代表的なものに、トタン(鉄表面に亜鉛をめっき)やブリキ(鉄表面にスズをめっき)があります。金属イオンを含む溶液に金属材料を浸し、電気を流すことで酸化還元反応が生じ、陰極側の金属材料表面に溶液中の金属が析出させて成膜する方法が一般的です。プラスチックなどの不導体に対しては、導電処理を行うことでめっきが可能です。

 

アルマイト

 アルミ製品に対して行われる成膜処理で、代表的な例として、やかんや鍋の表面処理に広く使用されています。硫酸などの電解液にアルミ製品(陽極)と鉛や炭素(陰極)を浸して印可することで、アルミ製品表面を酸化させ、アルマイトを生成する陽極酸化処理です。処理としてはめっきに近いですが、製品表面の上層に新たな膜を析出させるのではなく、製品表面層を直接膜化するという点が大きく異なります。アルマイト化することにより、耐食性、耐摩耗性、電気絶縁性を獲得します。

 

溶射

 加熱溶解した溶射材を製品に吹き付け、表面で凝固させて成膜する方法です。めっきやアルマイトとは異なり、処理可能な製品の選択肢が広く、合金、セラミック、プラスチック、木材の製品に対しても使用できることが大きな特徴です。溶射材も金属、セラミック、プラスチックなど、幅広い材料を選択でき、様々な種類の膜を生成できます。一方で、膜の密着力が弱いため、事前にショットブラストなどで表面を粗す前処理を行うことで密着力を向上させる対策があります。

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